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:浅見帆帆子さんの本との出会い

 それは10月のことだった。彼と彼の家の近くでデートをした後、次の日仕事だったため、夜遅く一人で家に帰るところだった。この頃はいつもそうだったが、この瞬間がもっとも嫌いな時間であった。彼との楽しい休日と次の日の恐ろしい看護師の仕事のギャップがあまりにも激しく、発狂しそうなくらい嫌だった。しかも、彼は温かい実家に帰るのに、それに引き換え私は誰もいない寒い部屋に一人で帰るのだ。本当に恐ろしいくらい嫌だった。

 この日も憂鬱な気分で帰るところだった。そんな気分で電車に乗る前に駅前の本屋さんに寄ったら、ふとある本が目にとまった。題名は『あなたは絶対!守られている』という本だった。まるで、今の私に向かって何かメッセージを発しているような気がした。

 ちょっと中身を見てみると、どうやらこの本は続編みたいで、隣に一冊目の『あなたは絶対!運がいい』という本が置いてあった。かわいらしい装丁で、中も読みやすそうな感じだった。著者は浅見帆帆子さんという私よりも若い女性だ。何となく親近感もわいた。私は『あなたは絶対!運がいい』の本を買い、彼と別れた後電車の中でその本を読み出した。

 内容は、私にとって衝撃的な内容だった。おおまかな内容を言うと、自分の人生は自分の精神レベルによって運が良くもなるし悪くもなる、といったものだった。私は帰りの電車の中で夢中になって読みふけり、自分の降りる駅でも気づかず、終点まで行ってしまったほどであった。

 そして、その本を読んで看護師に就職して以来感じたことのなかった、すがすがしいような明るい気分を初めて感じたのであった。普段なら彼と別れて明日の仕事のことを思うと、憂鬱で仕方のなかった時間に、初めて明るい気分になれたのであった。そう、まさに今の自分の人生の辛さを救ってくれるであろう本に私は出会ったのだ。

 この本を読んだお陰で、私の仕事に対する態度、人生に対する態度が変わった。今までは私をきつく叱る先輩看護師を嫌い、世の中を嫌い、自分自身さえ嫌いになっていた。なぜ私ばかりが辛いのか、とすべてを恨み、否定的な考え方ばかりをしていたのだ。

 でもこの本を読んで、こんな生き方は間違っている、ということにこの時気づいた。そして、今の状況があるのは、誰のせいでもなく自分が選んだ現実であるということを初めて知ったのであった。

 浅見帆帆子さんによると、その人の心の持ち方によって現実が変わるという。心の中を感謝の気持ちや良いもので満たしていると、良い現実が来るし、愚痴や不満でいっぱいだったりすると、それに見合った現実が来るという。運がいい人と悪い人の違いはここにある、だからこそ、運は自分で良くすることができるというのだ。

 これは私には妙に納得できることだった。人によってこの考え方に異論のある人もいると思う。好きで不幸な人生を歩む人はいない、と。でも、私はこの時帆帆子さんの言うことを信じて、自分の人生を変えてみようと思ったのだ。

 こうして、さっそく次の日から私はこの本で学んだことを実践するようにした。ネガティブ思考ではなく、プラス思考と感謝の気持ちでなるべく看護の仕事にのぞむようにしたのだ。もちろん、すべてその日から順調に変えられたわけではない。すぐに以前のような考え方に戻ってしまったり、愚痴や不満が口をついて出てくることも相変わらずあった。

 でも、この日を境に何かが私の中で変わったのだ。はっきり言って、帆帆子さんのような人生に対する考え方は、それまでの私の人生の中にはなかった。小さい時から両親に「感謝の気持ちは大事だ」とか「人の悪口を言ってはいけない」などという道徳的なことは繰り返し教えられていた。だけど、それらが直接自分の人生を左右するということは、まったくもって初耳だったのだ。

 こんなことはまったくの精神論だ、という人もいると思う。しかし、これを実践しても失うものは何もない。お金もかからない。その時の私は、この辛い生活から救ってもらえるなら、何でもした。だから私はこの方法を試してみたのだ。

 まず、私は心の中をなるべく明るいものや良いもので満たすようにした。帆帆子さんによると、人生で起こることはすべて自分が招いたことだという。だから、嫌なことや辛いことが起こると、自分の最近の態度や考え方を見直すようになった。これは、今までの私の生活にはなかったことだった。要するに私は、遅ればせながらやっと自分の人生に自分で責任を持つような考え方になったのだった。

 そして、その日以来、私の生活は徐々に上向きに変化していった。看護師の仕事が厳しいのは相変わらずだったが、少しずつ積極的に取り組めるようになった。そして、厳しくて嫌いだった先輩看護師たちを見る目も少しずつ変化してきた。先輩たちだって、何もいじわるで私に厳しくしていたわけではない。看護の仕事を教える上では仕方がなかったし、仕事以外ではいい人たちではないか、と思えるようにもなっていった。

 すると、自分が変わると相手も変わる。あれほど嫌だった病院の人間関係(私が勝手に心を閉ざしていたということもあるが)が、徐々に改善していったのだ。

 辛かったあの新人看護師の頃から4年たった今、私はまだ同じ病棟で働いている。人間関係はというと、信じられないかもしれないが本当に、本当に良い状態。病棟全体がアットホームな雰囲気で満ちており、大変な仕事ではあるものの、厳しい中でもみんなで楽しく和気あいあいとやっているのである。病棟に就職したての頃からすれば、信じられないことだ。もちろん自分が新人看護師ではなくなり、ある程度上になったからだという理由もあるだろう。

 でも、私は思う。私が変わったからすべてが変わったのだと。人を変えることはできない、とよく言われるが、本当にその通りだと思う。自分自身で変わるしかないのだ。自分が変わると、不思議なことに周りの人も変わるのだ。これはウソではなかった。少なくとも私にとっては真実だったのだ。

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もくじ
  ・自己紹介
  ・看護師の新人研修
  ・いよいよ病棟勤務
  ・プリセプターシップ
  ・厳しい看護師の先輩たち
  ・看護師の厳しい勤務
  ・仕事のプレッシャーで不眠症になる
  ・辛かった新人看護師の日々
  ・幻聴が聞こえる?!
  ・強まる孤独感
  ・強まる孤独感2
  ・自殺を考えた日々
  ・看護師の仕事で見つけた小さな希望
  ・看護師としてのひとり立ち
  ・看護師として少しずつ成長していく私
  ・浅見帆帆子さんの本との出会い
  ・思いが現実をつくる
  ・“気”というものに敏感になる
  ・看護師によってよく遭遇する場面
  ・先輩看護師としての辛さ
  ・後輩看護師を教える難しさ
  ・今日という日を感謝の気持ちを持って精一杯生きること
  ・後輩ナースに伝えたいこと
  ・病棟看護師を終えて

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